「AIと無料で連携できる」という甘い夢が打ち砕かれるまで 〜 SightEdit開発奮闘記

AI

🎯 はじめに:SightEditという野望

皆さん、こんにちは。今回は、SightEditという完全WYSIWYG編集ができる高機能な無料MarkDownエディタの開発で経験した、AI統合の壮絶な試行錯誤についてお話しします。

📈 なぜMarkDownエディタを作ったのか

近年、ITエンジニアの間でMarkDown形式を好む人が急激に増えています。GitHub、Qiita、Zenn、NotionなどのプラットフォームがMarkDownを採用し、技術文書作成の標準フォーマットとして定着しつつあります。

しかし、MarkDownには一つ大きな問題がありました:

学習コストの壁

  • #* などの書式記号を覚える必要がある
  • シンタックスエラーが起きやすい
  • 一般の人には敷居が高い

「これでは、せっかくの便利なフォーマットが技術者だけのものになってしまう」と考えました。

実はMarkDownは汎用性が高い

調べてみると、MarkDown書式に準じたフォーマットを採用している投稿サイトは意外と多いことが分かりました:

  • WordPress – MarkDown記法で投稿可能
  • note、はてなブログ – 部分的にMarkDown対応
  • 小説投稿サイト – 改行や強調などの基本記法が共通
  • GitHub – README、Issue、PR等で標準採用
  • 技術ブログサービス – ほぼすべてがMarkDown対応

つまり、一つのフォーマットで複数のプラットフォームに対応できるのです。

🎯 SightEditのコンセプト

「IT素人からエキスパートエンジニアまで、誰でも使えるMarkDownエディタ」

SightEditの特徴:

  • 📝 完全WYSIWYG編集対応 – 書式記号を覚える必要なし
  • 🆓 完全無料(広告なし)
  • 🖥️ Windowsデスクトップアプリ
  • 🚀 高機能なMarkDown編集機能
  • 🌐 複数プラットフォーム対応 – 有名投稿サイトの書式に変換出力
  • 📚 小説投稿サイト対応 – 独自の書式要求にも対応
  • 💻 GitHub連携 – レポジトリとの直接連携
  • 🎚️ 技術レベル別対応 – 初心者から上級者まで

段階的な学習体験

  1. 初心者: WYSIWYG編集のみで使用
  2. 中級者: MarkDown記法も併用
  3. 上級者: GitHub連携、高度な機能活用
  4. エキスパート: API連携、カスタマイズ機能

なぜWebアプリではなくデスクトップアプリにしたかというと、**「無料で使って欲しいから」**です。Webアプリだとサーバー維持費がかかりますが、デスクトップアプリなら一度作ってしまえば追加コストはほぼゼロ。ユーザーには完全無料で使ってもらえます。

そして次に考えたのが、「AIを搭載したい!」でした。

💡 天才的なアイデア(のはずだった)

ChatGPTやClaude、Geminiなど、優秀なAIサービスが続々と登場していますよね。これらを使って文書作成を支援できれば、SightEditは最強のエディタになるはず!

そこで思いついたのが、「各AIのWebアプリと連携すれば、無料枠やサブスク枠で使えるのでは?」という発想でした。

当初の計画:

  • ChatGPT.com、Claude.ai、Geminiなどのブラウザ版と連携
  • ユーザーが既に契約しているサービスをそのまま活用
  • 追加の契約やAPIキー取得は不要
  • 完全に無料でAI機能を提供

なんて素晴らしいアイデアだと思いませんか?

😅 現実は甘くなかった…

意気揚々と開発を始めました。ブラウザ自動化ライブラリを使って、各AIサービスのWebページを操作するスクリプトを書き始めました。

ところが…

開発が上手くいかない。

何度やっても接続が不安定だったり、突然動かなくなったりするのです。「技術的な問題だろう」と思って調べてみると、とんでもない事実が判明しました。

🚫 AI業界の厳しい現実

OpenAI (ChatGPT): 利用規約で明確に禁止

  • 「プログラム的なデータ抽出を禁止」
  • 「自動化によるサービス利用を制限」
  • 規約違反でアカウント停止のリスク

Google (Gemini): 自動検出システムで監視

  • AI搭載の悪用検出システムが24/7稼働
  • 疑わしい活動を自動スキャン
  • 段階的制裁措置(警告→制限→停止)

Anthropic (Claude): 競合利用を厳格に制限

  • 競合AI製品開発への利用を完全禁止
  • 2025年8月にはOpenAIのClaudeアクセスを競合利用違反で停止した実例も

つまり、規約上禁止されているだけでなく、技術的にも検出・ブロックされるようになっていたのです。

🤔 Claude Codeという一筋の光?

絶望的な状況の中で、一つの希望を発見しました。Claude Codeです。

Claude CodeはAnthropicが公式に提供するツールで、Web版Claudeの契約でターミナルからClaude AIを使えるサービスです。「これならWeb契約を流用できるのでは?」と期待しました。

でも調べてみると…

Claude Codeの現実:

  • 🖥️ 完全にターミナル専用
  • 💻 コマンドライン操作必須
  • 🔧 Node.js・npmの知識が必要
  • 📝 コーディング特化(文書作成には不適)
  • GUIアプリとの統合は不可能

つまり、SightEditのようなデスクトップアプリとは相性が悪すぎることが判明しました。Claude Codeは開発者向けのコーディングツールであり、一般ユーザー向けの文書作成エディタには全く適さなかったのです。

🔄 方針転換:API個別契約方式へ

すべての道が閉ざされたように思えましたが、ここで現実的な解決策を採用することにしました。

新しい方針:

  1. 各AIサービスの公式APIを個別契約してもらう
  2. SightEditに設定画面を用意
  3. ユーザーが自分で取得したAPIキーを入力
  4. ウィザード形式で簡単に設定できるようにする

この方式なら:

  • ✅ 利用規約に完全準拠
  • ✅ 技術的に安定動作
  • ✅ 各社の公式サポート対象
  • ✅ ユーザーが自分のペースで利用可能

🎯 救世主現る:Gemini API無料枠

さらに調査を進めると、素晴らしい発見がありました。

Google Gemini APIには、クレジットカード登録不要の無料枠が存在する!

Gemini API無料枠の特徴:

  • 🆓 完全無料(クレジットカード不要)
  • 📊 100リクエスト/日の制限
  • 🔑 Googleアカウントだけで取得可能
  • 2分で設定完了

これは完璧です!SightEditのデフォルトAIとして、Gemini APIを推奨することにしました。

📊 SightEditのユーザー層別AI戦略

SightEditは「IT素人からエキスパートエンジニアまで」を対象としているため、AI機能も技術レベルに応じて段階的に提供することにしました。

ユーザー層の分析

ユーザー層想定利用シーン推奨AI機能設定難易度
一般ユーザーブログ記事、日記、小説執筆Gemini API(無料枠)⭐ 簡単
中級ユーザー技術ブログ、WordPress投稿+ Claude API⭐⭐⭐ 普通
上級ユーザーGitHub連携、複数サイト投稿+ ローカルAI⭐⭐⭐⭐⭐ 高度
エキスパート開発文書、API文書作成+ カスタムAI連携⭐⭐⭐⭐ 技術者向け

📊 文書作成に適したAIサービス一覧

調査の結果、SightEditの各ユーザー層におすすめできるAIサービスは以下の通りです:

🥇 Tier 1: デフォルト推奨

Google Gemini API

  • ✅ 無料枠でクレジットカード不要
  • ✅ Googleアカウントのみで利用可能
  • ✅ 文書作成に十分な性能

🥈 Tier 2: 高品質オプション

Anthropic Claude API

  • ✅ 文書作成に最適化された高品質AI
  • ✅ 開発者フレンドリーな利用規約
  • ❌ 最低$5のクレジット購入が必要

Mistral AI API

  • ✅ EU製で低価格
  • ✅ 他社の約1/10のコスト
  • ❌ 日本語対応は限定的

🥉 Tier 3: 特殊用途

Perplexity API

  • ✅ リアルタイム検索機能統合
  • ✅ 情報源の引用機能
  • ❌ 文書作成よりも検索特化

❌ 推奨しないサービス

OpenAI GPT API

  • ❌ 利用規約でエディタ統合にリスクあり
  • ❌ プログラム的抽出禁止の規定

xAI Grok

  • ❌ X Premium+契約($16/月)が必須
  • ❌ 一般向けAPI未提供

🔧 最終的な実装戦略

Phase 1: 必須実装

  1. Gemini API統合
    • デフォルト推奨として最優先実装
    • ウィザード形式の設定画面
    • 使用量表示機能

Phase 2: 上級者向けオプション

  1. Claude API対応
    • 高品質な文章生成を求める技術者向け
    • 課金警告システム付き
    • 詳細な設定ガイド
  2. その他AI対応
    • Mistral AI、Perplexity等
    • 段階的に追加予定

Phase 3: 将来的な拡張

  1. ローカルAI対応
    • Ollama等のオフライン動作AI
    • 完全プライベートな利用

🎉 開発から学んだこと

この開発過程で学んだ重要なことをまとめます:

技術的な学び

  1. 「無料だから使える」は幻想 – 各社とも自動化対策を強化
  2. 利用規約の重要性 – 技術的に可能でも法的にNGなケースが多数
  3. 公式統合の価値 – 非公式な方法よりも公式APIが結果的に楽

ビジネス的な学び

  1. フリーミアム戦略の限界 – AI企業も収益化に本気
  2. ユーザー体験と現実のバランス – 理想と現実の折り合いが重要
  3. 段階的実装の有効性 – 完璧を目指さず、実現可能なものから

開発者としての学び

  1. 調査の重要性 – 実装前の徹底的な調査が時間を節約
  2. 柔軟性の価値 – 当初計画にこだわりすぎない
  3. ユーザー目線の維持 – 技術的制約をユーザビリティに変換

🚀 今後の展望

SightEditは、現実的なAI統合により真に使えるMarkDownエディタを目指します。

今後の計画:

  • 🎯 Gemini API統合の完成(最優先)
  • 🔧 直感的な設定ウィザードの実装
  • 📝 各AIサービスの詳細ガイド作成
  • 🌟 ユーザーフィードバックに基づく改善

SightEditのビジョン: 「技術の制約を受け入れながらも、ユーザーにとって最高の文書作成体験を提供する」

📝 おわりに

当初の「AIと無料で連携する」という甘い夢は打ち砕かれましたが、その過程でより現実的で持続可能な解決策を見つけることができました。

AI業界の急速な変化と厳格化する利用規約の中で、開発者として学ぶべきことは:

  1. 現実と向き合う勇気
  2. ユーザー価値を見失わない視点
  3. 技術的制約を創造性で乗り越える発想力

SightEditの開発はまだ続きます。この記事が、同じような課題に直面している開発者の皆さんの参考になれば幸いです。


SightEditは現在開発中です。リリース時には、ぜひお試しください!

最終更新: 2025年8月

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