Chrome AI機能による予期しない自動翻訳問題とその対処法

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概要

2024年中頃から、Google ChromeでMediumなどのプラットフォームに英文で記事を投稿する際、意図せず日本語に翻訳されて投稿されてしまう現象が確認されています。この問題の原因は、Chrome 126以降に実装されたGemini NanoBuilt-in Translator APIによる自動翻訳機能です。

本記事では、この問題の詳細と解決策について技術的観点から解説します。

問題の現象

発生条件

  • ブラウザ: Google Chrome (バージョン126以降)
  • 環境: 日本語OS環境、または日本語がブラウザの優先言語
  • 対象サイト: Medium、WordPress、その他テキスト投稿フォーム
  • 内容: 英文で記事を投稿

具体的な現象

  1. エディターで英文を入力・投稿
  2. 投稿完了後、記事が日本語で表示される
  3. 編集モードでも日本語で保存されている
  4. 後から追記した部分は英語のまま残る

他ブラウザでの動作

  • Microsoft Edge: 正常(英語で投稿される)
  • Firefox: 正常(英語で投稿される)
  • Safari: 正常(英語で投稿される)

技術的背景:Chrome AI機能の実装

Gemini Nano統合(Chrome 126~)

GoogleはChrome 126以降、Gemini Nanoをブラウザに直接組み込みました。

システム要件:

  • OS: Windows 10/11、macOS 13+、Linux
  • ストレージ: 22GB以上の空き容量
  • GPU: 4GB以上のVRAM
  • ネットワーク: 初回ダウンロード時に無制限接続が必要

Built-in Translator API

主な機能:

  • ローカル環境での即座の翻訳処理
  • サーバーとの通信不要
  • WebGPUとWASM技術による高速処理

API例:

// Built-in Translator API(実験段階)
const translator = await window.ai.translator.create({
  sourceLanguage: 'en',
  targetLanguage: 'ja'
});

const result = await translator.translate(inputText);

Origin Trials段階

現在、以下のAPIがOrigin Trials(実験段階)で提供されています:

  • Prompt API
  • Translator API
  • Summarizer API
  • Language Detector API

13,000人以上の開発者が参加しており、活発に機能テストが行われています。

問題の原因分析

推定メカニズム

  1. 言語検出: Language Detector APIが投稿フォームの英文を検出
  2. ユーザー環境判定: ブラウザ言語設定が日本語と判定
  3. 自動翻訳実行: Built-in Translator APIが英→日翻訳を自動実行
  4. フォーム送信: 翻訳済みテキストがサーバーに送信

なぜ後から追記した部分は英語のまま?

後から追記したAuthor’s Note部分が英語のまま残ったのは、以下の理由が考えられます:

  • 処理タイミング: 初回投稿時のみAI翻訳が動作
  • コンテキスト認識: 追記部分は「翻訳不要」と判定
  • 斜体テキスト除外: Markdownの斜体部分は翻訳対象外

対処法

1. Chrome AI機能の無効化

chrome://flags/ での設定:

chrome://flags/#optimization-guide-on-device-model
→ Disabled に設定

chrome://flags/#translate-force-trigger-on-english
→ Disabled に設定

chrome://settings/languages での設定:

  • 「Google翻訳を使用」→ オフ
  • 「翻訳するかどうか確認する」→ オフ

2. Gemini Nano モデルの確認・削除

モデル状態の確認:

chrome://on-device-internals/

ストレージ使用量確認:

  • Model status から File path を開く
  • モデルサイズ(通常20GB超)を確認

3. 回避策

一時的な対応:

  • 他のブラウザ(Edge、Firefox)を使用
  • シークレットモードでの投稿テスト
  • VPN経由での投稿(地域判定回避)

根本的対応:

  • Chrome AI機能の完全無効化
  • 安定版リリースまで待機

今後の展開

2025年の計画

  • Gemini in Chrome: 2025年5月からデスクトップ版で本格展開
  • 対象ユーザー: Google AI Pro/Ultra 購読者(米国先行)
  • 機能拡張: マルチタブ対応、Webナビゲーション自動化

開発者への影響

ポジティブ:

  • サーバーレス翻訳機能の活用可能
  • ローカル処理による高速化・プライバシー保護

ネガティブ:

  • 意図しない自動処理によるユーザー体験の悪化
  • デバッグの複雑化
  • 多言語サイトでの予期しない動作

まとめ

Chrome AI機能による自動翻訳は技術的には革新的ですが、ユーザーの意図に反した処理が発生するリスクがあります。

重要なポイント:

  1. Chrome 126以降でGemini Nano統合により発生
  2. Built-in Translator APIが投稿時に自動翻訳を実行
  3. 他ブラウザでは発生しない
  4. 設定での無効化が可能

特に多言語コンテンツを扱う開発者・ライターの方は、この問題を認識して適切な対処を行うことをお勧めします。

AI技術の進歩は素晴らしいものですが、「AI による親切心」が時として意図しない結果を招くことがある典型例として、今回の事例は記録に値するでしょう。

参考資料


本記事は2025年8月時点の情報に基づいています。Chrome AI機能は現在も活発に開発中のため、仕様が変更される可能性があります。

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